出典:ドラマー相棒season2「殺してくれとアイツは言った」
相棒Season2・第6話(2003年11月19日放送)
「殺してくれとアイツは言った」
ゲスト:大杉連 結城しのぶ 中村俊太
脚本:砂本量 監督:大井利夫
大杉蓮さんがハードボイルド作家として出演。
刑事ドラマ=勧善懲悪の概念を崩した回も多いドラマ「相棒」ですが、この回は特に最後の結末が何とも言えない、やり切れない、複雑な思いが残るストーリーだと思います。
『相棒』の中でもやり切れない結末の逸話
小野田官房長官の学生時代の友人であるハードボイルド作家・菅原英人(大杉連)
ラジオ番組で「殺して欲しい」と過激な発言をした事で様々な事件が起こります。
早速、切断された指が送られてきたことで官房長の命令で特命係の二人が菅原の警護役となります。
そんな状態でも本人は「むさくるしい男が警護かよ」などと我侭放題。
亀山君のことを「亀ちゃん」と呼んだり食えない男です。
それでも自身のサイン会などではファンに対して優しい一面も見せます。
作家志望のフリーターの冴えない男の子(中村俊太)にも彼に向けた一言を添えてあげたりします。
ちなみに米沢さんも菅原英人のファンで右京さんに本にサインをして欲しいと頼んでました(笑)
ある朝、奥さん(結城しのぶ)の実家から送られてきた宅急便が爆発し奥さんが亡くなってしまいます。
事態は益々悪化する中、2本目の指も送られてきて古いアパートに身を隠すことになるのですがそんな状況に嫌気がさす菅原は飲み歩いてしまいます。当然特命の二人は付き合うしかありません。
さんざん飲んでアパートに帰ると不審人物が・・・
アパートの場所を知らないはずなのに何故でしょう?
当の菅原は「ジャンキーに怯えて暮らすくらいなら死んだほうがマシだ」「俺が終わりにしてやる」と言い、再び記者会見を開きます。
程なくして犯人より終結宣言の手紙が届きます。
その後犯人と覚しきホームレスが麻薬中毒で死亡しているのがみつかり、事件は解決したかのようになります。
当然、右京さんはいくつかの謎が残っていると真の犯人を突き止めるわけです。
・何故、奥さんの実家の住所がわかっていたのか?
・身を隠したアパートを何故、突き止められたのか?
・ホームレスが麻薬を買うお金はどこにあったのか?
・指を切断した犯人がどうやって爆弾を作れたのか?
など疑問がいくつもあった訳です。
スペインへ旅行へ行こうとする菅原の前に現れる特命係の二人。
菅原の側には若い女性の姿が。
実は犯人は菅原英人で最初から奥さんを殺そうと、まるで自分が狙われているかのように装っていたわけです。
米沢さんに書いてあげたサイン本の言葉の中に旧文字の『惡』と終結宣言に使われていた『惡』の文字が同じだったことも彼が犯人であると確信した右京さん。
しかし、物的証拠は何一つありません。
よって菅原英人を捕まえることが出来ません。
それでも「いつか必ずあなたを落とします」という右京さん。
そんな特命係に軽く手を振り、スペインへ行こうとする菅原の前に何とサイン会に来ていたファンの男の子(中村俊太)が現れ、菅原を刺します。
「どうしてだ?」と言葉を振り絞り聴く菅原にファンは
「だって殺してくれって言ってたから」と・・・
菅原は死に何も出来なかった特命係。
ここで物語は終わります。
勧善懲悪ではない刑事ドラマを見た気がする!
このやるせない結末によって特命係は永遠に犯人を捕まえることが出来なくなった事、
菅原が自分の犯行をごまかすために嘯いていた「殺してくれ」の言葉によって盲目的な自分のファンに最後殺されてしまう所など、
後味が何とも言えない複雑な気持ちを抱えたままで終わってしまった回だと思います。
大杉蓮さん演じる我侭なハードボイルド作家を見事に演じていましたね。
そして、
右京さんが菅原が犯人だと気づいたとき、小野田官房長との会話の中ではっきりとは言わず含みをもった言い方する、それで官房長もたぶんわかったのでしょう。
菅原がスペインに旅立つ前に2人で飲んでいる時の全て分かっているのにそれを出さない大人の会話が切ないながらも味わいがありましたね。
あと、
米沢さんが菅原のサイン本を貰う件は相棒らしいクスッと笑える所だったのですが、最後犯人に繋がる一因になるというのも上手い流れだなと思いました。
しかし、
本当に最後のシーンは初めて見たときは「えー、嘘でしょ!? これが終わり???」としばらく理解できなかった結末なぁ~
ストーリー的にも映像的にも・・・
亀山薫が犯人を取り押さえて、右京さんは菅原の傷口を押さていたけど亡くなったのがわかると携帯で警視庁へ連絡する所で終わりますからね。
ここからまた1つのドラマが始まってもおかしくないような終わり方でした。
刑事ドラマ=勧善懲悪・犯人が必ず捕まる
という図式を見事に裏切ってくれた物語だったと思います。
それがまた相棒らしい相棒ならではだったのではないでしょうか。